教員の福祉貯金ってやった方がいいの......?
共済貯金(福祉貯金)は、特定の職業に従事している人々に提供される安定した貯蓄手段です。
しかし、これが本当に資産運用の中心として適切なのかを考えると、一概に「やるべき」とは言えない側面もあります。
この記事は、公立学校共済組合を例に、共済貯金のメリット・デメリット、そして資産運用の選択肢について解説します。
共済貯金(福祉貯金)とは
共済貯金は、公務員や特定の団体職員が利用できる貯蓄制度です。
組合員から受け入れた貯金を共済組合が効率的に運用し、有利な利息の支払いを通じて、組合員の生活の安定と福祉の向上を図ることを目的としています。
一般的な銀行の普通預金や定期預金と比較すると、利率がかなり高めに設定されているのが特徴です。
例えば、神奈川県市町村職員共済組合の場合、利率は1.52%(令和6年4月1日現在)の半年複利となります。
公立学校の教師が加入する公立学校共済組合では、「福祉貯金」という名で運営されています。
共済貯金のメリット・デメリット
年利が高いというメリットがあるものの、共済貯金にはデメリットもあります。
メリットとデメリットを、特徴も含めて解説します。
共済貯金のメリット
1. 高い安全性
共済貯金は元本保証があり、預けたお金が減る心配はありません。
価格変動リスクのある金融商品に不安を感じる方にとっては、大きな安心感になります。
2. 比較的有利な利率
銀行の普通預金と比べ、利率が高めに設定されていることが一般的です。
愛知県の公立学校の教員の場合、利率は年0.5%の半年複利となります。(令和6年10月1日時点)
愛知県の公立学校の教員の福祉貯金は、「一般財団法人愛知県教育職員互助会」が、愛知県教育委員会等から社内預金制度の事務を受託して管理しています。また、「一般財団法人愛知県教育職員互助会福祉貯金管理要領」により管理に関する事務を行っています。
メガバンクの預金金利が0.02%程度なのに対して、かなり高めに設定されています。
このように、共済貯金は低リスクで資産を少しでも増やしたい人に向いています。
3. 手軽に始められる
職場の共済組合を通じて手続きが行えるため、手軽に始められます。
教員の場合は、一般的に事務員にお願いすれば提出書類を準備してくれます。
共済貯金のデメリット
1. 流動性の制限
共済貯金は、急に資金が必要になった際に即座に引き出すことができない場合があります。
例えば、愛知県の場合は払い出しに以下のようなルールがあります。
払出提出書類の締切日 | 毎月8日及び15日 |
払出の送金日 | 8日受付分は当月20日、15日受付分は当月27日に送金 |
このように、引き出したいと思ってから1ヶ月ほど時間がかかる場合もあり、急な資金繰りに対応できないことが多いです。
2. 大きなリターンは期待できない
元本保証という安全性が高い分、リターンは控えめです。
銀行預金よりは高い金利であるものの、投資的な観点で見た場合、リターンは控えめということです。
特にインフレが進むと、実質的な資産価値が目減りするリスクがあります。
3. アセットクラスは自分で選択できない
基本的にアセットクラス(投資対象の資産の種類)を自分で選ぶことはできません。
例えば、愛知県の公立学校の教員の福祉貯金は、以下の商品で運用されています。
- 外国の株式
- 外国の債券
- 国内株式
- 国内債券(国債、政府保証債、地方債、安全性の高い事業債)
- 普通預金(利回り0%)
「株式だけに投資して、より高いリターンを狙いたい」や「安全性の高い米国債のみに投資したい」ということはできません。
共済貯金を資産運用の中心にしないほうがいい理由
共済貯金は、悪いものではありません。
しかし、効率的な資産運用を考えるのであれば、「増やす」ための資金は優良な国債や投資信託を自分で直接購入し、「守り」の資産(生活防衛費)は銀行で現金として保管する方が優位性があると言えます。
共済貯金が資産運用の中心として不向きな理由を、2つの観点に分けて解説します。
共済貯金が資産運用の中心に不向きな理由
- 資金の流動性が低い
- リターンが低い
資金の流動性が低い
共済貯金は引出し手続きに時間がかかることが多いです。
そのため、何か緊急でお金が必要になったときに使う、生活防衛費的な資金を共済貯金に入れてしまうと、突然の出費に対応できません。
共済貯金は、「守り」の資産(生活防衛費)として置いておくのには不向きと言えます。
「何かあったときように現金を置いておきたいが、寝かせておくと無駄なので、少しでも増やしたいから共済貯金に入れておこう。」と考え、共済貯金に生活防衛費を入れてしまうと後々困ることになります。
生活防衛費は、すぐに引き出せる銀行口座に現金として保管するのがベストです。
リターンが低い
資産を「増やす」目的であれば、共済貯金は効率が悪いです。
銀行口座よりは高い金利を得られるものの、インフレリスクを考えると資産価値が維持できない可能性があります。
そこで、「増やす」という目的であれば、優良な国債や投資信託を自分で直接購入した方が効率的と言えます。
特に、米国債のような優良な生債券を購入すれば、「満期まで待つことで、額面が満額返ってくる」「低リスクで3.5%~5%の利息が狙える」というメリットがあります。
国債は共済貯金と異なり、短期では元本割れしてしまうものの、満期までもてば元本が返ってくるにもかかわらず、共済貯金以上のリターンが狙えます。
そもそも、共済貯金は国債を含む債券で運用されていることが多いので、「自分で債券を買う」ということは、「短期元本割れリスクは受け入れる代わりに、リターンを増やす」という行為になります。
また、eMAXIS Slim米国株式(S&P500)やeMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)のような、優良な投資信託は、共済貯金や国債よ利もより高いリターンを狙うことができます。
しかし、こちらは長期で見れば大きく増加する可能性が高いものの、元本割れリスクがあります。
10年以上のように長期的に運用するつもりなら、投資信託がおすすめです。
以上2点の理由から、共済貯金は資産運用の観点から見ると、少し中途半端な位置付けと言えます。
「増やす」ための資金は優良な国債や投資信託を自分で直接購入し、「守り」の資産(生活防衛費)は銀行で現金として保管した方が合理的と言えます。
まとめ
共済貯金(福祉貯金)は、安全性が高く、堅実な貯蓄手段として魅力的です。
ただし、資金の流動性やリターンの低さを考慮すると、生活防衛費の管理や資産運用の中心としては不向きです。
生活防衛費は銀行預金で確保し、増やす目的では優良な国債や投資信託など、より効率的な運用方法を検討しましょう。
資産運用を多角的に行うことで、より安定した将来設計が可能になります。
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参考にしていただければ幸いです。