公務員である教師でも、申請なしでやっていい副業があるって本当......?
結論から言うと、兼業許可申請を提出しなくとも得られる副収入はあります。
国家公務員は国家公務員法、地方公務員は地方公務員法によって、副業が原則禁止されています。
そのため、副業を行う場合は、所轄庁の長や任命権者の許可を得る必要があります。(副業の許可を得る具体的な方法についてはこちらの記事)
しかし、許可は必ず下りるわけではなかったり、副業内容の条件も厳しかったりと、なかなかハードルの高いものになっています。
そこで、この記事は、教師が許可なしで得てもよいと認められている副収入について解説します。
実際に行う際の具体例や注意点なども合わせて解説します。
教師も副業が可能
教育公務員特例法により、公務員である教師の副業・兼業は原則禁止されています。
しかし、所轄庁の長や任命権者の許可を得れば、教師でも副業を行うことができます。
どんな副業が許可されて、どんな手続きが必要かは、こちらの記事を参考にしてください。
ただ、副業の内容に制限があったり、自治体によってはなかなか許可が下りなかったりと、そう簡単に副業を始められるわけではありません。
そこで、まずは「申請せずに得てもよいと認められている副収入」を知り、選択肢を広げることをおすすめします。
では、1つずつ解説します。
許可なしで得られる副収入の事例
許可が不要とされる具体的な収入源は以下の通りです。
許可を必要としないもの
- 単発の講演活動
- 消防団の活動
- 社会活動などの実費弁償
- 不要品の売却
- 一定規模以下の不動産
- 一定規模以下の売電
- 株式・FX・仮想通過などの投資
上記の項目の具体例は、「総務省 社会の変革に対応した地方公務員制度のあり方に関する検討会 働き方分科会(第1回)資料3 地方公務員の兼業について」を参考にしています。
①営利団体の役員等を兼ねること
②自ら営利企業を営むこと
③報酬を得て事務・事業に従事すること
のいずれにも該当しないことを明確にし、兼業許可を要さずに兼業が行われている事例(許可を要しない事例)
総務省 社会の変革に対応した地方公務員制度のあり方に関する検討会 働き方分科会(第1回)資料3 地方公務員の兼業について
また、許可が必要か必要ではないかの基準は、国家公務員向けの「人事院 義務違反防止ハンドブック」を参考にしました。
では、1つずつ具体例をあげて解説します。
単発の講演活動
継続的又は定期的ではない、単発的な講演等に対する謝礼は許可が必要な兼業には該当しません。
実例
主事級の職員が、母校である大学の就職セミナーで講師を務めた。同校卒業から5年前後の社会人という条件に基づき選出されて単発で引き受けたもので、講演の謝礼は8千円程度。
総務省 兼業許可を要しない行為であることが明確な事例
ただし、継続的に講演活動を行う場合は、許可が必要になります。
消防団の活動
消防団員として活動し、報酬や手当を受け取ることは、法律上問題ありません。
実例
係長級以下の多くの職員が、消防団等充実強化法の規定に基づく申請・認可を受けて、町の消防団員として、火災発生時の消火活動や、火災予防・水防活動、遭難者等の捜索活動に従事している。
総務省 兼業許可を要しない行為であることが明確な事例
消防団等充実強化法において、職員から消防団員との兼職の申請があった場合は、職務の遂行に著しい支障がある場合を除き、任命権者はこれを認めなければならないとされています。
また、同条第2項では、地方公務員法第38条第1項に基づく任命権者の許可は不要とされています。
ちなみに、消防団員(「団員」階級)の年間の平均報酬は、3万円程度です。
社会活動などの実費弁償
地域のボランティア活動やプロボノ活動などで、実費程度の弁償金を受け取る場合も許可は不要です。
たとえば、交通費や食事代が該当します。
実例
主事級の職員が、プロボノ(スキルや経験を生かした社会貢献活動)の推進団体に参加登録。専門的な知識や資格を持つ他の参加者に交じり、公務で培った経験を活かし、事務処理のエキスパートとして活動に従事。実費相当の交通費のみ受領している。
総務省 兼業許可を要しない行為であることが明確な事例
部活動の大会に審判員として参加した際に支給される手当もこれに該当します。
不要品の売却
フリマアプリやネットオークションでの不要品の売却も許可不要です。
個人の所有物を売却するだけであり、営利目的ではないとみなされるためです。
ただし、営利を追求する目的で販売したり、大量に仕入れるなどして、定期的・継続的に行なったりすると、自営とみなされ禁止事項に該当します。
Q. インターネットオークションやフリーマーケットアプリを用いて商品販売を行ってもいいですか。
A. インターネットオークションやフリーマーケットアプリを用いての商品販売は、営利を追求する目的でアカウントを取得するなどして店舗を設けたり、不特定多数への販売目的で大量に仕入れるなどして、定期的・継続的に行えば、小売業を営むものとして自営に該当し禁止されます。
人事院 義務違反防止ハンドブック
一定規模以下の不動産
教師が所有する土地や駐車場を賃貸して得る家賃収入は、許可不要なケースがほとんどです。
ただし、以下の基準を超えた場合、自営兼業の申請が必要になります。
独立家屋・・・5棟以上
アパート・・・10 室以上
土地・・・10 件以上
駐車台数・・・10 台以上
賃貸料収入が年額 500 万円以上 等
人事院 義務違反防止ハンドブック
「賃貸料収入が年額 500 万円以上 」とは、家賃、共益費等の収入のことをいい、経費等控除後の額ではないことに注意してください。
Q. マンション5室、家賃月額各9万円の物件を賃貸する予定です。年間の家賃収入は9万円×5室×12 月=540 万円ですが、経費等を控除した収益は年間約 420 万円(<500 万円)となります。自営兼業の申請は不要ですか。
A. 申請が必要です。賃貸料収入の金額は、申請時において見込まれる将来1年間の収入予定額で判断します。収入予定額とは家賃、共益費収入等をいい、経費等控除後の額ではありません。
人事院 義務違反防止ハンドブック
また、民泊は、不動産賃貸には該当せず、収入や件数の多寡にかかわらず、自営兼業に該当し、申請が必要です。
Q. 従来より付き合いのあった不動産会社から、「中古の一戸建てが売りに出されたので、購入して民泊として運用してみないか」と言われました。収益のシミュレーションでは、年間の収入予定額は約 480 万円(<500 万円)となります。自営兼業の申請は不要ですか。
A. 職員が民泊のホストとなる場合(インターネットサイト等を利用して、広く宿泊者の募集を行い、繰り返し人を宿泊させ宿泊料を受ける場合)には、不動産賃貸には該当せず、旅館業や住宅宿泊事業を営むこととなるため、収入や件数の多寡、民泊の許可や届出の有無にかかわらず、自営兼業に該当し、申請が必要です。なお、申請が承認されるためには、当該事業を相続等で家業として承継している等の基準を満たしている必要があります。
人事院 義務違反防止ハンドブック
一定規模以下の売電
太陽光発電などの売電収入も許可不要です。
ただし、以下の基準を超えた場合、自営兼業の申請が必要になります。
発電設備の出力が 10 キロワット以上である場合
人事院 義務違反防止ハンドブック
株式、FX、仮想通貨などの投資
株式投資やFX、仮想通貨取引で得た利益は許可不要です。
これらの活動が「資産運用」とみなされるためです。
ただし、企業の経営に参加し得る地位となった場合は、報告が必要になります。
営利企業について、株式所有の関係その他の関係により、当該企業の経営に参加し得る地位にある職員に対し、人事院は報告を徴することができる。
株式所有の報告(国公法第 103 条第3項)
「当該企業の経営に参加し得る地位」とは、「株式会社の発行済株式総数の3分の1を超える株式を所有する場合」のことを言います。
所属機関と密接な関係にある株式会社の発行済株式総数の3分の1(特例有限会社の場合は4分の1)を超える株式を所有する場合等に、職員は所轄庁の長等へ報告が必要となります。
人事院 義務違反防止ハンドブック
ほとんどの人は報告の義務はないという条件ですね。
まとめ
教師が許可なしで副収入を得られるケースは、以下のように「職務に支障を与えない」「営利目的でない」活動がほとんどです。
許可を必要としないもの
- 単発の講演活動
- 消防団の活動
- 社会活動などの実費弁償
- 不要品の売却
- 一定規模以下の不動産
- 一定規模以下の売電
- 株式・FX・仮想通過などの投資
上記は兼業申請の必要はないものの、副業というには報酬が少なく、継続性がないものが多いです。
副業にしっかり取り組みたいという方は、「所轄庁の長や任命権者の許可を得て行う」もしくは「家族の事業を無報酬で手伝う」という方法があります。(詳細はこちらの記事を参考にしてください)
教育公務員の兼業申請の必要・不要のどちらも法律が関わってきますので、よく調べた上で副業に取り組んでください。
『教師の年収アップNavi』は、他にも教員の副業やお金についての役立つ情報を発信しています。
参考になれば幸いです。