高額療養費制度と附加給付って何か手続きが必要なの......?
公立学校の教職員が、高額療養費制度を利用したり、附加給付の支給を受けたりする場合、どのような手続きが必要なのでしょうか。
結論から言うと、どちらも手続きの必要はなく自動的に支給されます。
ただし、少々ややこしい制度なので、詳細は知っておいた方がいいです。
この記事は、公立学校の教職員の高額療養費制度と附加給付の詳細を解説します。
高額療養費制度について
高額療養費制度とは
医療費の家計負担が重くならないよう、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が1か月(歴月:1日から末日まで)で上限額を超えた場合、その超えた額が支給される制度を「高額療養費制度」(こうがくりょうようひせいど)といいます。
高額療養費制度は、健康保険や国民健康保険といった公的医療保険制度の1つであり、各保険の被保険者が利用可能です。
上限額は年齢や所得に応じて定められており、いくつかの条件を満たすことにより、負担を更に軽減するしくみ(世帯合算、多数該当など)も設けられています。
なお、保険診療とならない医療等や入院中の病院の食事代、差額ベッド代等は高額療養費の対象となりません。
医療費の自己負担が、以下のように高額療養費算定基準額を超えたときは、その超えた分が高額療養費として給付されます。※1
区分 | 高額療養費算定基準額 | 多数回該当 ※3 |
---|---|---|
標準報酬月額83万以上 (年収約1,160万円~) | 252,600円+(医療費-842,000円)×1% | 140,100円 |
標準報酬月額53万以上83万未満 (年収約770~約1,160万円) | 167,400円+(医療費-558,000円)×1% | 93,000円 |
標準報酬月額28万以上53万未満 (年収約370~約770万円) | 80,100円+(医療費-267,000円)×1% | 44,400円 |
標準報酬月額28万未満 (~年収約370万円) | 57,600円 | 44,400円 |
低所得者※2 (住民税非課税者) | 35,400円 | 24,600円 |
※1 表は69歳以下の自己負担限度額を示す。
※2 市町村民税の非課税世帯、または生活保護法の要保護者であって低所得者による高額療養費を受けることにより生活保護法の被保護者とならずにすむ者が該当。
※3 医療保険上の同一世帯(組合員およびその被扶養者)で過去12か月の間に3回以上高額療養費が給付されているときは、4回目の給付から多数回該当の金額が高額療養費算定基準額となる。(「世帯内の同一の医療保険の加入者」とは、同一世帯とは、1つの保険に加入する被保険者と被扶養者のグループのことを指す)
高額療養費制度の支給を受けるには
高額療養費は、医療機関等から診療報酬の請求に基づいて自動的に計算されるため、支給申請書等の提出は不要です。
公立学校の教職員の場合、概ね3か月後に組合員の給付金口座に自動給付されます。
通常、高額療養費制度は自己負担限度額を超えた分のみ払戻しを受ける仕組みになっているので、窓口では一時的に自己負担分全額の医療費を支払う必要があります。
しかし、あらかじめその月に支払う医療費が自己負担限度額を超えることが見込まれる場合は、加入している公的医療保険に申請することで「限度額適用認定証」を交付してもらうことができます。(70歳未満)
限度額適用認定証と保険証を提示すれば、1カ月の窓口における支払いを、自己負担限度額まで抑えることができます。
申請書は加入している各健康保険組合・協会から入手する必要があります。
ホームページからダウンロードできる場合もあります。
公立学校の教職員が加入している「公立学校共済組合」では、ホームページから申請書をダウンロードして、所属所(学校)へ提出する流れになっています。
ただし、現在はマイナ保険証を利用すれば、事前の手続きなく、高額療養費制度における限度額を超える支払いが免除されます。
その場合、限度額適用認定証の事前申請は不要です。
附加給付について
附加給付とは
付加給付制度(ふかきゅうふせいど)は、健康保険組合の一部または公務員が加入する共済組合(共済組合においては名称は異なります)において支給されている高額療養費に上乗せして医療費を払い戻してくれる制度です。(国民健康保険、全国健康保険協会には付加給付制度はありません)
健康保険組合ごとに、自己負担限度額が定められており、被保険者とその被扶養者は、自己負担限度額以上を医療機関の窓口で支払った場合は、後日、自己負担限度額以上が還付されるという健康保険組合独自の制度です。
公務員が加入する共済組合においては、健康保険組合で付加給付と呼ばれている制度が附加給付と呼ばれています。
給付内容も各組合がそれぞれ決めているので、附加給付の名称や金額は異なりますが、共済組合の附加給付は自己負担限度額が25,000円(標準報酬月額53万円以上は50,000円)のケースが多いです。
公立学校の教職員が加入している「公立学校共済組合」では、以下の区分に応じて一部負担金払戻金または家族療養費附加金(=附加給付)が支給されます。
標準報酬月額 | 自己負担限度額 原則 | 自己負担限度額 合算高額療養費が給付される場合※1 |
---|---|---|
53万円以上 | 50,000円 | 100,000円 |
50万円以下 | 25,000円 | 50,000円 |
※ 合算高額療養費とは、世帯内の同一の医療保険の加入者の方について、毎年8月から1年間にかかった医療保険と介護保険の自己負担を合計し、基準額を超えた場合に、その超えた金額を支給する制度です。(ここでいう「世帯内の同一の医療保険の加入者」とは、同一世帯とは、1つの保険に加入する被保険者と被扶養者のグループのことを指す)
附加給付の支給を受けるには
公立学校の教職員が加入している「公立学校共済組合」の附加給付は、高額療養費制度と同じく、医療機関等から診療報酬の請求に基づいて自動的に計算されるため、支給申請書等の提出は不要です。
公立学校の教職員の場合、概ね3か月後に組合員の登録口座に自動給付されます。
まとめ
高額療養費制度と附加給付の重要ポイントは以下の通りです。
重要ポイント
- 公立学校の教職員が、高額療養費制度を利用したり、附加給付の支給を受けたりする場合、どちらも手続きの必要はなく、自動的に支給される。
- 公立学校の教職員は、高額療養費制度と附加給付のおかげで、医療費の自己負担限度額は月額25,000円に抑えられる。(標準報酬月額50万以下)
- 事前に限度額適用認定証の申請を行っておけば、高額療養費制度における限度額を超える支払い自体が免除される。
- マイナ保険証を利用すれば、事前の手続きなく、高額療養費制度における限度額を超える支払い自体が免除される。
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